IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

住宅金融支援機構理事長賞第4回サステナブル住宅賞(新築部門)

「Secret garden」

建築主T様
設計者芦澤竜一建築設計事務所
施工者(有)安松託建
建設地群馬県伊勢崎市
構造木造・RC造
階数平屋建
延床面積200m2

講評

この住宅は中心市街地から離れ、新たに住宅地開発が進む地域にある。低層の住宅が建ち並びつつあり、次第に市街地化がされているとはいえ、周辺にはまだ農地が残り、遠くに赤城山や浅間山を望むのどかな雰囲気である。450m2の敷地に中庭を囲むようにゆったりと建てられた平屋である。家族4人のスペースが独立性を保ちながら鎖状に配置され、中庭を介してつながる。家族の気配を感じながら住みたいという施主の希望に応えたものだ。
このあたりは「赤城おろし」で知られる強風地帯だが、この中庭は格好の風除けにもなっている。北側に配置された居間、食堂は、南からの日射がよく入るように配慮されていて、風から守られた日溜り空間とよぶにふさわしい。このような分散的なプランは、必然的に外部に接する建物表面積を増やし、暖房時の熱損失を増やすことになるとされることもあるが、断熱・気密にしっかり配慮すればこの懸念を払拭できるだけでなく、四季を通じて快適な室内気候づくりに役立てることができる。また、自然とのさまざまなつながりを楽しむことができる利点もある。実際この住宅ではエアコンへの依存する時間が極めて少ないと聞いた。 暖房は居間の薪ストーブを中心に、それぞれの部屋は必要なときに床暖房やエアコンで暖房する、部分・間欠暖房方式であることもこの住宅の特徴だ。コンパクトなプランにして熱負荷を最小にし、高効率の機器を導入して全館・連続暖房を行うという寒冷地の省エネ方式に比べると、分散的・開放的なプランで部分・間欠方式のこの住宅は、対照的であるように見えるが、温暖地のこれからの省エネ方式として、積極的に評価できるものである。
この住宅のもうひとつの大きな特徴は、屋根全体が覆土され、屋上緑化されていることだ。多様な地域種の植物が植えられ、ウッドデッキが主体の中庭とは対照的である。家族の楽しみであるとともに、隣近所の2階からは緑の借景として喜ばれ、近隣とのコミュニケーションを築くきっかけにもなっているという。建物をつくることが周辺の豊かな環境形成にも貢献している好例であり、住宅単体の省エネという枠を超えた発想は、サステナブル住宅とよぶにふさわしい。

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