IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

板硝子協会会長賞第8回サステナブル住宅賞(新築部門)

「中太田の家」

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建築主 個人
設計者 (株)大共ホーム
施工者 同上
建設地 岩手県盛岡市
構造 戸建・木造
階数 2/0(地上/地下)
延床面積 138m2

講評

盛岡市郊外に佇む「中太田の家」は、冬は南面に雪原が、夏には田園が広がる風景を眺めることのできる大きな開口部を有するLDKがあり、そのLDKには5畳相当の吹抜空間が設けられており、その吹抜空間の上部に設けられた窓から差し込む光とLDKの内装に施された漆喰とが、LDKの光環境を快適なものとしている。
快適な温熱環境の確保と省エネルギーに対する工夫は、住宅の各所・各部位に十二分に施されている。LDKの南面には、緩衝帯としてウィンターガーデンと呼ばれるサンルームが設けられており、その土間床は黒色に仕上げられているため、高い蓄熱効果を有しており、冬季の夜間における暖房エネルギーの削減に大きく寄与している。また、室内壁面のほぼ全面に施された厚さ2.5mm以上の漆喰にも蓄熱効果を持たせており、冬の暖房エネルギー、夏の冷房エネルギーの削減に大きく貢献している。さらに、漆喰の有する調湿効果は、夏季における湿度の低減にも寄与しており、爽やかな雰囲気を味わえる夏の空間をつくりだしている。冬季の日射取得量を高めるために設けられたLDK南面の大きな開口部は、断熱性能の弱点部位であるが、その断熱性能を高めるために、アルゴンガスの封入された2Low-E三層ガラスが用いられるとともに、サッシと断熱材との取合い部の納まりに対する工夫も施されている。一方、夏季の日射遮蔽に対しては、ウィンターガーデンの開口部にスクリーンを配するとともに、庇効果を期待して開口部の位置を外壁面より15cm室内側へ後退させるといった工夫が施されている。そして、開口部も換気および室温調整に対する配慮がなされた位置に設けられている。
外壁・内壁に使用されている漆喰は自然素材であり、冬季における周辺の雪原との色彩的調和や自然との共生を体感できる住宅となっている。また、先に述べたような温熱環境に対する配慮だけでなく、施工時の省資源や将来の資源循環、湿気対策・防蟻対策といった住宅の長寿命化などに対するきめ細やかな配慮も各所・各部位に対してなされており、居住者は、これらのことを日々強く実感し、快適で健康的な生活を送っている様子がうかがえる。
以上のように、「中太田の家」は、居住者が日々快適な生活を営むことに最大限の配慮を払いながら、低炭素型社会および資源循環型社会の構築に資する住宅のあり方を示した作品であると言える。

 

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