IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

理事長賞第3回サステナブル建築賞(事務所ビル部門)

「鹿島赤坂別館」

建築主鹿島建設(株)
設計者鹿島建設(株)
施工者鹿島建設(株)
建設地東京都港区
構造SRC造、一部RC、S造
階数地上15階地下2階
延床面積33,350m2

講評

 鹿島赤坂別館は鹿島建設の技術関連部署であり、隣接するKIビルの設計部門との情報交換を促進し、活性化促進を目的として計画されたもので、KIビルとのデザインの調和が図られている。オフィス部分は「コラボレーション」による生産性向上を中心におき、「フレキシビリティ」、「サステイナビリティ」、「セイフティ」をキーワードとしている。
窓はKIビルと同じ熱線吸収ガラスとLow-eガラスを複層化した比較的大きな窓となっていて、ダブルスキン同等の温熱環境を提供している。窓サッシの一部から外気を取り込み、オフィス、廊下、階段室を経由して屋上のガラリから排気されるという自然換気系統も設計されている。システム的には個別分散ヒートポンプパッケージ(ビル用マルチ)の高効率利用を提案しているところが大きな特徴である。
環境配慮の取り組みとしては
・エコモジュールの採用
6.4m×6.4mの基本モジュールを快適性、省エネルギー性に結びつけている。
・タスク&アンビエント空調システム
アンビエント空調機により外気を処理して室全体を穏やかに空調し、タスク空調機を各エコモジュールに配置して、居住者近傍を自在に制御するというオンデマンドのコンセプトに基づく空調方式である。
・フリーアドレスハイブリッドセンサー
明るさセンサー、人感センサー、ワイヤレスリモートセンサーにより照明、空調を居住者の立場で細かく制御している。ワイヤレスリモートサーモは居住者近傍の温度を検知してフリーアドレスハイブリッドセンサーに情報を送信している。
・ユニバーサルコンフォート
居住者の好みに応じて、あるいはクールビズ設定に対して、気流感の強弱を自由に切り替えられる吹出口を提案している。
この建物では、省エネ性能を確認するために多くの検証テストを実施しているが、特に、ビル用マルチについてはメーカーの空調制御コントローラから各種の運転データを取得し、またシミュレーションも行い、これまで困難であったビル用マルチの省エネルギー性能評価を可能にし、多くの知見を得ている。オフィス専有エリアの年間の平均COPは2次搬送動力を含めて2.18と高性能であるが、アンビエント系統の中間期、冬期のCOPだけ抽出すると冷暖房負荷の少ないこともあり0.6~1.7と低下することが判明した。省エネ指標としてのPAL=216.9MJ/m2、CEC/AC=1.00、CASBEE=Sランクとなった。
以上、理事長賞として十分価値あるものと認められる。

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