IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第4回サステナブル建築賞(小規模建築部門)

「八峰町役場庁舎」

建築主八峰町
設計者(株)青島裕之建築設計室
施工者大森・サンワ特定建設工事共同企業体 保坂電気工事(株) ミサワ環境技術(株)
建設地秋田県山本郡八峰町
構造木造
階数2階建
延床面積2,098m2

講評

 この建物は、町村合併を機に行政刷新も含め新たな役場のあり方が求められ計画された新庁舎である。町全体がサスティナブルな自治への転換が不可欠となっており、合理化された、身の丈にあった自治、地域の自立再生を目指していた。新庁舎にもそういう方針に沿ったコンセプトが求められ、かつ町のシンボルとして町民が新たな庁舎に誇りをもてるような計画を求められた。
建設場所は、西は日本海、東には白神山系が広がっている田園風景に囲まれた地区が選ばれた。建物は、その環境や風土に溶け込んだ外観デザインを目指しており、地域の豊富な地場産の木材を使用した木造建築物として建設された。
建物は、ひさしの深い大屋根を建物全体にかけ、大屋根とセンターコアが作り出すはざまの空間を活用し、自然換気・自然通風をとっている。平面構成は、センターコアのシンプルな構成としている。センターコアは「蔵」と称されており、金庫や倉庫スペースとしている他、耐震壁をコアに集中的に設けることで外周の耐震壁設置を最小限とし、外部の豊かな環境が見渡せるオープンな執務空間が確保されている。
自然環境・自然エネルギーの活用では、大屋根の自然換気・自然通風の他、外壁断熱には外断熱方式を採用、また外部サッシには国産の木製サッシlow-Eペアガラスを採用し高断熱化を行っている。庁舎内の空調には、地下100メートルの深さに24本の地中熱交換器を埋設し、ヒートポンプ方式で庁舎内空調を行っている。建物は、2009年9月から使用開始されているが、役場職員・来庁者の省エネ意識が高まっており、旧庁舎に比べて光熱費も大幅に低減されている。
町全体の身の丈にあったサスティナブルな自治への転換のシンボルとして建設されたコンパクトな庁舎で、厳しい予算の中、自然環境や自然エネルギーを最大限に活用している。八峰町と同じような状況にある他の市町村への波及効果は大きく、環境豊かな地方の小規模庁舎建築物の一つのあるべき姿を提示していると言える。

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