IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

理事長賞第4回サステナブル建築賞(商業施設その他部門)

「東京都立多摩総合医療センター・小児総合医療センター」

建築主東京都
設計者多摩医療PFI(株) (株)日建設計 清水建設(株)
施工者清水建設(株) (株)シミズ・ビルライフケア
建設地東京都府中市
構造RC造、一部S造・SRC造
階数地上11階地下1階
延床面積129,879m2

講評

 PFI事業による国内最大級規模の医療施設であり、綿密な建築計画のもとで、二つの病院が同一建物内に一体化されている。建設費に加えて15年間に及ぶ維持管理費と光熱水費が事業に含まれており、建設コスト内で可能な限りの省エネルギーや環境配慮等を目指している。建物の屋上やバルコニーには、武蔵野台地や既存樹林と共生するために積極的な緑化が施され、高性能ガラスやバルコニーを兼用した庇のデザインをはじめとする建築的工夫による熱負荷削減策に加えて、多くの先進的な設備的手法を取り入れるとともに、運用開始後のファイン・チューニングによってエネルギー消費の大幅な削減を実現している。
詳細なシミュレーションによる検討を行うことによって、約13万m2という大規模施設に対応する最適な中央熱源方式を採用し、冷水・温水・蒸気を一括製造することで施設全体における省エネルギー、熱負荷の平準化、ランニングコストの削減を実現している。大容量冷水蓄熱槽とターボ冷凍機による高効率システムによって年間の冷房負荷に対応し、給湯負荷、暖房負荷に対しては、コージェネレーションシステムからの排熱を給湯加熱・暖房にカスケード利用している。また、夏期の電力デマンドを低減し、長期停電時でも運転可能な吸収式冷温水機も採用している。
運転管理者に省エネ運転情報を提供するための省エネ運転ナビゲーションシステムは、運転実績評価のための復習機能、翌日の機器最適運転情報を提示する予習機能、不具合検知・劣化診断機能を備えている。
病院特有の薬品臭や体臭を除去するための脱臭機能型換気方式を実現するために、CFD解析によって給排気口の位置を検討し、その有効性を実病室においても実測によって確認している。また、脱臭装置を併用して換気量を低減する試みも為されている。
給排水衛生設備関連では、床面清掃が容易となる新開発の壁掛け型大便器が採用されており、大きな節水効果をあげている。また、厨房排水の処理水、屋上の雨水、空調ドレン水を集水して、雑用水源に有効利用している。
施設管理側と運用側の十分な双方向コミュニケーションによる省エネルギー運用がなされ、夏期の計画停電時も災害拠点病院としての役割を十分に発揮する等、医療機能の維持継続(BCP)の面で高い信頼性を確保している。CASBEEでもSクラス(2004年版)の高い評価を得ており、先進的な環境配慮型病院建築の好例である。

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