IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞第4回サステナブル建築賞(小規模建築部門)

「立業社ビル」

建築主(株)立業社
設計者清水建設(株)
施工者清水建設(株)
建設地富山県富山市
構造S造
階数4階建
延床面積2,084m2

講評

 国道41号線に西面して、太陽光発電の巨大な顔をもつ特異な外観が異彩?を放っている。都心と空港を結ぶ幹線道路を行き交う人達に、否応なしに強い印象を与える。タクシーの客にあれは何ですかと良く聞かれる、という話にも納得である。
もちろん、その外観には大いなる意味があり、鏡面の様に景色を映し出す太陽光発電と北面に開いたライトコートはエコビルとしての象徴である。東は北アルプスに正面し、現地審査でも秀麗な白亜の山並を遠望することができた。富山駅前の都心から郊外に移転し、省エネと恵まれた景観を獲得した幸せな建築である。
北陸一のエコ・省エネビルを目指したという性能は、1000MJ/m2・年を下回る実績がそれを見事に証明している。設備的に特筆すべき点はあまりないが、建築性能と運用でそれを補って余りある結果を導き出している。すなわち、地道な取り組みでコストを掛けずに大きな省エネを可能とした建物である。
設備面では地下水利用と太陽光発電がやや目立つ存在であるが、道路に面してダブルスキンを構成する太陽光発電パネルは50%程度の透光面積を確保し、適度の日射遮蔽と採光の両立に成功している。ただし、パネルの四周は開放され、ほとんど外気に近い状態である。冷房負荷低減と中間期の通風を重視した結果と思われるが、長い暖房シーズンのための工夫が欲しかったところである。
建築的には、南面にコアと吹き抜け、北に面してライトコートを設け、これらの空間を介して冷房負荷低減と東西の通風、採光が強く意識された計画であり、熱収支に配慮しながら徹底した工夫が施されている。そして、それを実践する社員の取り組みが高い実績を導き出している。とりわけ、日々の運用記録を社長自らが解析し、また様々な創意工夫と実践で社員を先導している点も成功要因の一つとして看過できない。 防災拠点としての建築的対応や行政と連携した取り組み、雷と雪への対策など、気候特性に配慮し地域に密着する地場企業の特質と責任を具現している点も評価に価する。
郊外移転に伴う顧客の減少もほとんどなく、何よりも社員の笑顔が増え、モチベーションが向上したとのこと、これらが当ビルの価値を雄弁に物語っている。

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