IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞第6回サステナブル建築賞(事務所建築部門)

「電算新本社ビル」

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所在地 長野県長野市
構 造 S造、免震構造
規 模 9,873m2 地上5F
建築主 (株)電算
設計者 (株)日建設計
施工者 (株)竹中工務店

講評

JR長野駅からほど近いフラットな敷地に建つ地方都市郊外型オフィスである。居住人口密度が高い上に在席率も高く、ある階では4m2/人でPC2台/人という高い熱負荷の厳しい設計条件下でヒューマンスケールの心地良いオフィス空間を提案している。8mという奥行きの浅いオフィスが並列する単純な平面形であるが、真ん中にコミュニケーションボイドと呼ばれるアトリウムを挟み、ボイド付近に打合せコーナーを配した巧みなオフィスレイアウトで超高密度なオフィスであることを忘れさせる。また、ボイドによって打合せの声がオフィス全体に程良く広がり、ビル全体が一体化され、活気が生まれている。ボイド上部のガラストップライトには、シースルー太陽光発電パネルが仕込まれている。冬の始め頃現地を訪れたが、長野の澄んだ空気を窓まわりから取り入れ、ボイド上部に設けられた重力式自然換気口が効率よく排気していた。
50%以下のエネルギー消費量で面発光によって、かつ「明るさ感」の評価という視点で新規開発された日本初のスクリーンライトが秀逸である。天井放射冷房と床染み出し空調の併用、Low-E発熱ガラスによる朝の冷気降下の抑制、昼と夜で白とグレーの羽根の面をひっくり返して使用するブラインドでの窓面の輝度制御、個別制御の可能にしたユーザースイッチも開発され、注目すべき環境装値が満載である。昨今、環境装置のテンコ盛りになった建築の例はよく見られるが、電算新本社ビルでは様々な装置がシンクロし、人の感覚を評価しながら全体でよく調整された高質のオフィス空間となっている。
また、この地域ならではのエネルギー資源として、100m深さから汲み上げる毎分1,500~2,000ℓの豊かな井水を有効活用している。年間を通じて水温が15度に保たれているため夏季冬季ともに井水ヒートポンプでの空調に利用し、また便所の100%洗浄水としても利用した結果、省エネ効果として40%削減の実績を残した。
総じて長野の気候風土を加味した上でスクリーンライト等の新機軸技術の開発が加わり、バランスの良い高質な建築設備計画である。サステナブル建築賞として高く評価された。

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