IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第7回サステナブル建築賞(大規模建築部門)

「YKK80ビル」

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所在地 東京都千代田区
構 造 SRC造、S造、RC造、免震構造、CFT
規 模 20,920m2  地上10F/塔屋2F/地下2F
建築主 YKK不動産(株)
設計者 (株)日建設計
施工者 鹿島・戸田・大和ハウス工業建設JV/東洋熱工業(株)

講評

アルミ建材メーカーの本社機能を担う建物である。サインや看板が連なる秋葉原の街の中、首都高の高架の脇、西向きの前面道路という、厳しい立地でのプロジェクトとなっている。 この厳しい敷地条件に対して、2重のFIX窓で騒音を防ぎ、アルミ縦格子の外付けスクリーンで日射遮蔽を行うという、シンプルな手法が採られているが、よく見ると、熱輻射を避ける断面形状の工夫、階高間で自立させるアイディアなどが組み込まれており、シンプルながら緻密に構成されたものであることが見て取れる。
さらに、ペリメーターでの空調の工夫、役職者をコア側とする家具レイアウトの提案が加わり、環境配慮と空調設備、構法、オフィスプランニングが見事にインテグレートされた計画となっている。
その結果として、ファサード全面が繊細なアルミスクリーンで覆われ、モノリシックな外観が導き出されている。秋葉原の猥雑な風景の中で、新たなノイズを生み出すのではなく、逆に静かな表情を持たせることで、存在感を発揮することに成功している。複雑なファサードエンジニアリングではないが、きわめてレベルの高いファサード構成といえよう。
また、厳しい高さ制限のもとで必要とされる床面積を確保するために、タイトな階高での計画が求められたが、放射パネルを活用した空調システム、扁平梁の採用によって、無理なく解決が図られている。この構造・設備のインテグレーションも特筆されよう。執務空間では、放射パネルに勾配を持たせて間に照明を配し、照度の確保と自然対流による気流の創出が目論まれている。一方、エレベータホールでは、天井扇によって気流感を持たせた環境制御を行うなど、室内環境についても隅々まで工夫がなされている。
このプロジェクトを進めるにあたって、オフィスレイアウトを役員会で承認して社内の意思統一を図るなど、発注者が意欲的に取り組んださまがうかがえた。その発注者のもと、綿密なプログラムが導き出され、積極的に新しい技術の導入が図られ、時代を牽引する建築に結実した。発注者であるクライアントが高い意識をもってプロジェクトに臨み、その高い要求レベルに設計者・施工者が見事にこたえた結果といえよう。高く評価される建築、プロジェクトである。

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