IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞SB05Tokyo記念サステナブル建築・住宅賞(住宅部門)

「K邸」

建築主個人
設計者(株)双葉建設コンサルタント
施工者(株)沼田ハウス
建設地山形県新庄市
構造木造
階数2階建
延床面積214m2

講評

K邸は、山形県新庄市(Ⅱ地域)に所在する築140年の古民家を解体し、再建築したものである。
各地の古民家はその構造・景観性・文化性に優れたものであるにも拘わらず、その維持保守の困難さと温熱性能の低さ(寒い暗い、住みにくいなど)、水回り設備の古さなどから、見捨てられ、解体される事例が多い。
この住宅は解体し、再建築し直すことによって、耐震補強、断熱・気密性の向上(Q=1.22、C=1.68)、最新水回り設備の導入をリーズナブルなコスト(建築147千円/m2、設備15千円/m2)で実現したもので、省エネ効果の予測(年間6.18l/m2)データも用意し、実測(室内温度実測、冬季暖房費用の比較)により、検証している。
構造は伝統的軸組式、小屋は扠首組、平屋建てであるが、階高が高く(4m)、小屋裏も大きく、気積が大きいので、平均的な天井高による相当床面積を算出して、断熱仕様を定めている。
壁は外大壁・内真壁で、外部には付け柱により、民家風の様式を表現している。壁の構成は外部は漆喰塗り、外壁通気層を設け、その内側に付加断熱層(GWB64K、厚25mm)、耐震補強兼下地としての構造用合板を柱材の外面に打ちつけ、真壁内は断熱材(HGW16K、厚90mm)の上に、気密シート、ラスボード下地漆喰塗り仕上げとしている。
開口部はPVCサッシ、ペアガラス(3+12+3)入り。ドアは断熱ドア(等級H-4)を使用。
屋根は長尺カラー鉄板葺き。急勾配(10/10)であるので、通気層を設けた断熱材入りパネルとして製作し、施工している。断熱材はHGW16K、厚200mmである。
構造材は柱、梁、地桁・鼻桁、扠首、棟木など主要な材に古材を再利用。内外の仕上材は自然素材(しっくい、木質等)を用い、サステナビリティとともに健康と快適に配慮している。
夏季は冷房不要。冬季は薪ストーブ1台で十分であるという。
古民家の解体・再生には経験ある業者・職人による計画・設計・施工が必要であるが、沼田ハウスは地元業者として古民家改修のキャリアがあり、大工等の職人も経験者が多く、省エネについては学識者の助言を受けて実施している。
以上、地方の都市部において、地域の風土に根ざし、伝統を守りつつ、長寿、快適、健康、省エネなどサステナビリティの高い住宅を実現している。

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