IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

理事長賞SB05Tokyo記念サステナブル建築・住宅賞(住宅部門)

「T邸」

建築主個人
設計者田中直樹設計室
施工者菅野建設(株)
建設地福島県梁川町
構造RC+木造
階数2階建
延床面積233m2

講評

 T邸は、福島県伊達郡梁川町(Ⅲ地域)に所在するRC造と木造による混構造2階建ての住宅兼事務所である。
 全体の構成はRC造のコアを木造でくるむ考え方で、RC造部分は構造的コアであって、かつ蓄熱機能を果たし、木造部分は開放的空間と縁側を確保し、かつ、コンクリート部分の外被となって耐久性向上、可変性対応の機能を持っている。
 木材は県内産のスギ、マツを使用し、資材の流通に要するエネルギーの軽減に努め、構造材をそのまま仕上材とし、再生材(パーティクルボード、OSB、MDF)の使用、再生可能な材料(木材、鋼板)の使用に努めている。
 平成16年3月竣工のため、まだ十分なデータがないが、1年分の電気使用量、ガス使用量、灯油使用量、水道使用量、薪使用量(薪ストーブ用)、短期ではあるが夏と冬の内外温度が計測されている。Q値は2.2である。開口部は一般アルミサッシにペアガラス(5+6+5)であるが、平面計画的に巾1800の縁側を介したダブルスキンとしているので、一定の効果を得ている。特に冬期は南側の2階分にわたる全面開口が大きな熱取得を可能にしている。夏期には巾1600mmの庇の出が日射を遮り、庭の樹木と相まって、暑熱を柔らげる。なお、エアコンは使用しない。冬は薪ストーブ1台だけで十分であるという。
 内部は天井の高い大きな吹抜をもつ居間を中心にワンルーム風に構成されており、家族の所在の気配をお互いに感じられるしつらえになっている。
 外部は屋根、外壁、軒天井ともガルバリウム鋼板を使用し、外観はとてもモダンな感じであるが、この地方の農家をヒントに現代化したデザインである。
 若い住人のためのローコスト(建築126千円/m2、設備14千円/m2)であって、モダンで、長寿命でありながら可変性に富み、断熱・気密性を確保しながら日本的な開放的な空間をもち、デザイン的にも美しい住宅である。

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