IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

理事長賞SB05Tokyo記念サステナブル建築・住宅賞(住宅部門)

「Y邸」

建築主個人
設計者(有)山下和正建築研究所
施工者 (有)宗形工務店 樽川技建(株)
建設地福島県川内村
構造木造(枠組壁工法)
階数階数
延床面積208m2

講評

 山下邸は、福島県双葉郡川内村(Ⅱ地域)の山中にある枠組壁工法による別荘であるが、建築主は定年後には定住をめざしている。
 24000m2の広大な敷地は、当初農地であったが,荒廃して放置されていたものを,建築主が15年前に購入し、構想し、8年前から再造成に入り、年月をかけて少しずつ整備し、今回建物を実現したものである。園内には、流れ、滝、池、ビオトープ、果樹園、菜園、回遊庭園、植林木などがあり、井戸(深さ30m)、土壌バクテリア利用の重力流下式浄化槽(無動力)、コンポスターによる生ゴミ分解処理等と相まって住宅ともども自立的で、サステナブルな環境をめざしている。
 また住む上でも、洗剤・石鹸は天然原料のものをつかうなどの配慮をしている。
 構造はべた基礎の上に2階建ての枠組壁工法である。高気密・高断熱(Q=1.22、C=2.0)で、空気式OMソーラーに独自の排気ダンパーを組み合わせ、高気密化における排気の問題に対処している。
 開口部は外部側にアルミクラディング付き木製断熱サッシ、三層ガラス入り(アメリカ製)。
 基礎は外周布基礎の両面に型枠兼用の断熱を施している。外壁はGWR19、厚140mm、屋根はGWR30、240mm。  暖房、冷房ともに空気式ソーラーシステムによっているが、予備暖房として薪ストーブ1台(アイルランド製)とヒートエアコン1台を用意している。冷房は夜間冷気を蓄熱して利用。エネルギー源はすべて電力で、深夜電力も利用している。
 配管類は土間スラブの上に鞘管ヘッダー方式によるころがし配管とし、メンテナンスを容易にしている。
 冬季の内外温度の測定、年間消費電力のデータも蓄積して、設計の結果を検討している。
 コストも妥当である(建築147千円/m2、設備75千円/m2)。
 設計者のいうとおり、寒冷ではあるが、日照の多いこの地方の住宅のプロトタイプとなりうるものであり、建物としても美しく、景観にマッチしており、そのサステナブルなコンセプトと行動は十分評価できるものである。

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