IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

理事長賞SB05Tokyo記念サステナブル建築・住宅賞(住宅部門)

「H邸」

建築主個人
設計者(有)松尾設計室
施工者(株)ウエストホーム
建設地兵庫県加古川市
構造木造
階数2階建
延床面積140m2

講評

H邸は、兵庫県加古川市(Ⅳ地域)に所在する総2階建、湿式外断熱による内真壁・外大壁の木造住宅である。
全体に構造、構法、設備、性能、デザイン、仕上げ、コストにバランスのとれた計画がなされている。
湿式外断熱工法は、断熱施工の経験の少ない関西と言う土地柄から、断熱性と気密性を確保する上で、誰が施工しても信頼性の得られる施工性があることと性能の長期持続性とデザインとコストの総合的な判断から選択されている。また、外断熱は、コンセントボックスや金物周りのシールの問題も解決している。
内部は、主要部分は真壁造であるが、意匠的に柱の多さを抑えるため一部を大壁造にし、その柱はプレカットしてローコスト化したり、太い柱と細い柱の使い分け、開口まわりの納まり、梁と壁の納まりなど、若い設計者ではあるが、巧みなディテールである。木材は徳島産材である。
開口部はQ値計算・断熱材厚さ・バルコニーによる日射遮蔽など種々の条件を変えて熱環境とイニシャルコスト・ランニングコストの経済性を併せてチェックし,コストパフォーマンスを考慮した上で決定され,断熱サッシ、ペアガラス(4+12+4)が使用されており、デザイン的にも外断熱を利用した彫りの深い外観としている。
南面は、二階に巾1100mmのバルコニーを出し、二階の居住性をよくし、1階の夏の日射遮蔽に役立てている。
断熱性はQ値2.4、気密性はC値1.1。
暖房はべた基礎の上に設置した蓄熱暖房機2台。うち1台は床下を暖め、床暖房効果を狙っている。
冷房は既存のエアコン2台を活用(+2台の増設可能としてある)。
二階床、屋根下地は国産の杉を三層に貼り合わせてパネル化したJパネルを使用し、火打材を省略し、施工工数を減らし、価格も低減し、見た目にもよい。
屋根は登り梁の上にJパネルとして、断熱材ウレタンフォーム100mm。
デザインもコストパフォーマンスもよく(建築+設備で170千円/m2)、サステナブルであり、普及性の高い設計である。平成17年3月竣工のため、居住データがないのが残念である。今後の追跡、検証を期待したい。

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