IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

住宅金融支援機構理事長賞第3回サステナブル住宅賞(新築部門)

「箱の家‐124[S邸]」

撮影:上田宏

建築主個人
設計者(株)難波和彦+界工作舎
施工者小川建設(株)
建設地神奈川県横浜市
構造木造
階数2階建
延床面積142m2

講評

「箱の家-124[S邸]」は、横浜市青葉区の昭和50年代に開発された住宅地に建っている。建物は真南から冬季の日射を取り込むために南側に直面するよう前面道路に対して斜め45度の角度で切り落とした形状となっており、夏の日射を遮るための大きな庇とあわせて見るものの目を引きつける外観ではある。しかし、道路面からのセットバックと分譲当初からの外構・植栽の活用により、成熟した街並みを害すことはなく、周りとの調和を保ちながら新しい取り組みを主張している。
玄関から内部に入ると、リビング部分を吹き抜けとし、冬季の日射取得を最大限確保するための大きな窓を設けている。1・2階とも全面段差のない床としており、2階の子供部屋をはじめとし各所の間仕切りを固定化せず、一定のプライバシーを確保しながらも将来のライフステージの変化に対応出来るようにするなど長く住み続けるための工夫が行われている。
この建物の特徴の一つに風の通り道の確保があるが、これは南東からの風を上手に建物内に通すことにより、冷房設備の使用を極力軽減しようというものである。予め通風のシミュレーションを行っているが、完成後の検証でもほぼ同様な結果を得ており、冷房負荷の低減に大きく寄与している。
断熱性能に関しては、外壁間柱及び2階天井小梁上の構造用合板外側に断熱材を施工、開口部は複層ガラスの仕様である。これによりQ値1.68、C値1.2と充分な性能を確保している。また、設備に関しては、リビングの吹き抜け部分に24時間送水の輻射パネルによる全室冷暖房を、リビング床には水蓄熱式の床暖房システムを導入している。いずれも熱源にはヒートポンプを使用することでランニングコストの低減を図り、快適な環境を作り出している。
通風による環境コントロールと輻射暖冷房を組み合わせた、チャレンジブルな取り組みと言えるだろう。
総合的にもサスティナブルの観点から評価できる作品である。

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