IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣第4回サステナブル住宅賞(新築部門)

「松河戸の家」

建築主T様
設計者(有)笹野空間設計
施工者誠和建設(株)
建設地愛知県春日井市
構造木造
階数2階建
延床面積140m2

講評

松河戸の家は中層住宅、店舗、南側の戸建住宅に囲まれた角地で、隣地は農地という比較的低密度な敷地に建設されている。南に向かって大きな2層分の開口面をとり、幾何的なボリュームが存在感のある現代的な外観となっている。建築環境工学分野の学者の自邸ということもあり、様々な環境配慮の取り組みが行われている。大きな開口面を利用して、日射取得、日射遮蔽の工夫、自然通風の活用など、環境工学的合理性を追求したパッシブデザインとなっている。また、ボイドスラブ基礎を活用したクール/ヒートチューブ換気システム、ロールスクリーンを利用した簡易ダブルスキン、太陽電池・燃料電池コージェネレーションによる複合発電・給湯・暖房システム、HEMSによるエネルギー管理といった様々な技術が組み込まれており、高度な設備機器による環境配慮が行われている。これらトータルの取り組みが評価された。
一方でこうした機器の組み合わせなどが本当に有効に活用されているのか、過剰ではないのかとの指摘もあった。しかし現地を訪れてみると、設備は今ある最新の機器類を適切に組み合わせ、かつ、日射と自然通風を積極的に取り入れた、素直な設計となっていた。これらの制御方法についても、暑くなれば窓を開けたりブラインドを下ろしたり、我慢できなくなればエアコンを入れるという、容易に判断ができ、操作可能なシステムとなっていた。これはひとえに南側に大きな開口部をとった大空間によるシンプルな設計のため、室内環境の変化を感じやすく、かつ開口部や設備機器の操作が簡単に分かるようになっているからであった。住宅の内部空間としても、居間は吹き抜けによる高い天井と、大きなガラス面で庭と一体となった平面的な広がりを感じるデザインとなっており、快適で居心地のいい場所となっていた。意欲的に取り入れた高度な設備機器類の効果については、居住者自ら実測しており、その効果の検証にも期待したいが、なにより環境工学的に合理的で、かつ住宅としても快適な素直な空間構成を評価したい。

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