IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

日本木造住宅産業協会会長賞第4回サステナブル住宅賞(新築部門)

「GREEN HOUSE」

建築主K様
設計者(株)マニエラ建築設計事務所
施工者晃陽建設(株)
建設地奈良県奈良市
構造木造
階数2階建
延床面積149m2

講評

近年、耐震・耐風性や省エネルギーの性能向上が求められるに従い、壁が主体の家が多くなり、外に閉ざして中庭や光庭にのみ開いたり、点状の小さな窓のみの外壁としたり、集体としての家族の場も細かに間仕切ったりといった家が多くなる中で、内部が殆んどワンルームの家の南北面を複層ガラスの大開口で包んでいて、オーソドックスであり大胆ともいえる提案である。
提案の「スケルトン構造」が在来構法なのかトラスなのか不明解で、入れ子の2階のつくり方や関係にも不明な点を感じさせるが、南側に森、北側に両親の家の敷地での空間構成の意図は明快である。平面をみると、左右対称の階段のとり方をはじめ、1階と2階の関係など少々定型的で記号的に思えるが、2階の高めの腰壁に囲まれた個体としての家族の場と1階の集体としての家族の場の実態(写真で知り得る限りだが)に新鮮さとともに共感を覚えさせられる。
南側の常緑樹と落葉樹の混植の森、テラスの水面、南北の庇、開口面のカーテン、深夜電力による補助的な床暖房、可逆回転する天井ファンなどによる南側床の涼しさと暖かさの両立は、夏と冬、さらには中間期の、熱容量と負荷のバランスにかかわっており、難しさは決して少なくないと想像されるが、合理的な運転もまた十分可能と思われる。無論、屋根や東西面の散水などのより積極的な冷却策、天井吹き出しのヒートポンプエアコンなどが加われば、よりバランス調整はやりやすくなるだろうし、省エネルギーを損なうとは思えない。
したがって、三賞に達しえなかったのは、ひとえに北側のガラス大開口の故といってよい。森と両親の家とをつなぐ透明性を説得力の欠けたものとしているのは、無造作な駐車場のせいではないだろうか。西側を駐車場とし、1階北側をデッキとすれば、そのガラス面が描く光景や風景の説得力は数段高いものとなったと思われる。
三賞入賞のSecret garden、HOUSE BBと同様、住まいのありようが室内環境とともに明確に提案され、建築化されていて高く評価されてよい。

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