IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

優秀賞第4回サステナブル住宅賞(新築部門)

「A-ring-アルミ構造体による環境共生住宅-」

建築主M様
設計者アトリエ・天工人
施工者みづほ工業
建設地石川県金沢市
構造RC造・アルミニウム合金造
階数地上2階地下1階
延床面積111m2

講評

A-ring は、軽量で耐候性の高いアルミニウムを構造体として、さらにそれを輻射冷暖房システムとしても活用するというプロジェクトである。アルミニウムは軽量で耐久性に優れているため、構造体としての利用価値が高く、リサイクルも可能な材料である。その一方で高価なため、構造としての利用はあまり進んでいない。そこで、もう一つの特徴である熱伝導性の高さを利用して、地下水からの熱交換を行い、アルミニウム内のチューブによって表面温度をコントロールすることで、輻射冷暖房システムを行っている。構造であり冷暖房機器でもあるアルミニウムは、リングと呼ばれる長方形の筒を形成しており、これが2層分で住宅の中心に位置し、1層分のリングが水廻りに位置して、全体にアルミニウムによって構成される面が内部空間で存在感のあるものとなっている。これにはLEDも組み込まれており、高度に複合化したものとなっている。
敷地は比較的低密度の戸建住宅の町の一角にあり、地下水位が高く地熱利用などが容易にできる。しかし金沢は湿度が高く、結露などの心配がある。夏に訪問したことがあるが、これらの厳しい条件に対しても丁寧に配慮され、快適な内部空間が形成されている。アルミニウムの構造であり、金属とガラスによって構成された現代的な外観だが、大きな庇による日射遮蔽や広い開口部による日射の取得は、昔ながらの開放的な木造住宅の手法を現代的に置き換えているとも捉えられる。そのほかの工夫としては、植栽を使った緑のカーテンとミストによる夏の快適性の確保、1階の屋上を緑化することによる断熱性の向上と2階の照り返しの防止などがあげられる。当然、太陽光発電も設置されている。このように、アルミニウムの構造体をベースに様々な環境配慮の取り組みと組み合わせた住宅であることを高く評価した。建築の大学教員の自邸でもあり、消費電力やCO2排出量を継続して記録しており、これらの検証にも期待したい。

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