IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

優秀賞第5回サステナブル住宅賞(新築部門)

「風のカタチ」

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建築主個人
設計者スタジオグリーンブルー
施工者小林工業(株)
建設地群馬県伊勢崎市
構造木造
階数2階建
延床面積116m2

講評

東日本大震災以来、再生資源による発電が活発化し、戸建住宅の屋根にも太陽光発電装置の設置が進められ、産業のみならず住宅のエネルギー問題も、即、発電問題の観すら呈しはじめている。その背景というべきヒートポンプは、夏冬・日毎・朝夕の寒暖差の大きい日本の気候にあって、制御のし易さから効率化とともに冷房から暖房へも普及した。けれども、給湯は未だガスに及ばず、暖冷房も各室対流式の域を出ていない。
優秀賞の群馬県伊勢崎市「風のカタチ」の「エアコンの風が苦手」という住み手の言葉には、省エネルギーよりも、自然の日照や通風による、日本の木造家居本来の快適性再生への希いが強く込められているように思われる。在来工法を用いながら、東西方向の耐力壁を洗面浴室に集約して南北面の開放された筒状の建築とし、ベルヌーイの法則に従って内外を流れる風を制御し易くしている。CGミュレーションによる日照計画も説得力があり、日々覚醒感のあるワンヴォリュームの室内空間と、自然との呼応感の高い外部空間を生み出している。ただ、日照の〈換気・輻射暖房〉や通風の〈気化冷房〉には、開口部の適切な配置計画のみならず、障子の活用や断熱と熱容量とのバランスがよく熱拡散率に優れたメンブレン=皮膜、室温湿度を安定させ易い輻射暖冷房が伴わねばならない。土壌蓄熱の効果に裏付けが乏しく、「涼屋暖床」の健康な家居の実現には,「煙突効果」の正確な理解など,より合理的な環境工学的探求が必要だが、装置や断熱に安直に依存することなく、空間とともに建築的解決を探求する姿勢は高く評価されてよい。
今回、同様の日照の探究を長円形平面のなかで行っている提案があった。相隣への圧迫感が少なく、光の変化のみならず風の流れも滑らかで、通風や室内空間のワンヴォリューム化との連携が期待された。また、自然と豊かに呼応する、古代家居の廂の間に似た半戸外の空間の提案があった。輻射暖房すれば冬季も快適で、別荘に留まらず現代住居と評価し得たと、ともに選外に留まったことが惜しまれた。

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