IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第6回サステナブル住宅賞(新築部門)

「八雲の大屋根・小屋根」

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撮影:佐藤 信太郎

建築主個人
設計者KMKa一級建築士事務所
施工者(株)青木工務店
建設地東京都目黒区
構造木造
階数2階建
延床面積243m2

講評

本プロジェクトは、もとの敷地を分割して、若夫婦と父が住まう2階建ての「八雲の大屋根」と、若夫婦の叔母が単身で住まう平屋の「八雲の小屋根」の2棟の戸建て住宅の設計を行ったものである。敷地は高台の南向きで、都心だが自然風と日射の活用が可能な恵まれた条件である。敷地奥に2階建て、前面西側に平屋を配置しているため、2階建ての2階は南側にアプローチ空間と平屋しかなく、確実に日射を取り入れることができる。また敷地は南側の近くの公園から延びた道路の突き当たりのため、公園からの風が道を経由して敷地に入ってきており、2階はもちろんのこと、奥の1階でもアプローチ空間を経由して、風通しが確保されている。2棟の間には、もとの敷地の庭を残して、これまでの環境を保全する取り組みも行っている。屋根形状は、奥の2階建てが切妻、手前の平屋が片流れで、屋根勾配をそろえて、周辺の町並みのリズムに合わせている。南の妻面には大きな開口部を配しており、日射取得や風通しを重視して、太陽光発電などはあえて設置していない。
「八雲の大屋根」は、旗ざお敷地の奥に配置された2階建てで、1階に高齢の父親、2階に若夫婦が住まう空間となっている。若夫婦の住む2階は南側にベランダを配置して、時にはベランダでパ-ティも開くような開放的な空間となっている。屋根のひさしは、ベランダにかかっているが、日射を考慮し、開口部の高さに合わせて張り出しを変化させて、それがデザインの特徴となっている。1階は父のために快適で落ち着いた空間を確保している。
「八雲の小屋根」は、前面道路に面しているが、塀の高さなどが工夫されてプライバシーが守られている。こちらは細長いワンルーム形式の平面のため、トップライトやハイサイドライトで部屋奥に光を取り入れる工夫を行っている。
2棟ともに高い断熱性能を備え、高効率の設備機器を設置している。とくに家に居る時間の長い高齢者二人のすまいは、潜熱回収型ガス給湯器による温水式床暖房として省エネ性と快適性を確保している。
このように優れた住宅だが、特に都心にもかかわらず2棟を同時に設計することで自然を確実に利用できる環境を確保していることを高く評価した。

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