IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第6回サステナブル住宅賞(改修部門)

「KIP」

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建築主個人
設計者南 雄三 (株)杉坂建築事務所
施工者(株)杉坂建築事務所
建設地埼玉県飯能市
構造木造
階数2階建
延床面積159m2

講評

飯能駅近くの敷地にある築43年の木造戸建て住宅を大規模に改修して、断熱性を高めてパッシブな省エネを実現した事例である。外装は近年改修したばかりなのであまり手をつけていないが、躯体は耐震補強を行い、一部痛んでいた部分は取り替え、間取りは変更して全体に断熱をほどこし、建具を新たに設置している。特に断熱工事は、外装を残して内側から行ったため、設計・施工上の工夫が必要となった。改修全体の考え方は、しっかり断熱をしたうえで、高効率の設備機器だけでなく、建具の工夫で夏の通風と冬の日射取得を活用できるパッシブな省エネ手法を、現状のライフスタイルを維持したまま実現することである。
住まい手は母と兄弟の3人であり、それぞれ異なるライフスタイルで過ごしている。特に省エネの観点からは、風呂は近い時間に入った方がよいが、もともと母は夕方、弟は夜、兄は朝に入浴していたため、給湯器の高効率化や浴槽の断熱性能は向上させたが、それぞれの生活パターンは変えないようにしている。
施主の兄が木製建具製作会社の役員であり、躯体、内装には、埼玉近辺の木材をふんだんに使っている。また建具は、さまざまなパターンのものを製作している。内装建具には、ガラスではなくプラスチック製のものを使い、建具の断熱性を確保しつつ、軽量化をはかっている。パッシブな住宅では、天候、時間に合わせてある程度住まい手による建具の開閉が必要になるが、1日中家に居る母は、1階の開口部の開閉を、天候や気温に合わせて行っている。一方で2階の兄弟の部屋は、ともに日中不在にするため、内窓の上下に通気口を設けたものや、FIX窓の脇に断熱通風戸を設置して、不在時でも通風を確保できるような建具を開発している。また、屋根には太陽光発電3.4kWhを設置している。他にも飯能の和紙や陶器、ステンドグラスなどの作品がしつらえに組み込まれて、1階の広間を使ってこれらの展示会も開催して、周辺に開かれた設計になっている。
このように大規模な改修において、地産の木材をふんだんに使い、建具の様々な工夫によってパッシブな省エネ手法を実現したことを高く評価した。

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