IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

ベターリビング理事長賞第7回サステナブル住宅賞(新築部門)

「SHIRASU」

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撮影:DAICHI ANO(阿野 太一)

建設地 鹿児島県鹿児島市
設計者 (株)アート総合設計
施工者 (株)アルカンシェル
延べ面積 144m2
地上階/地下階 2/0
構造 鉄骨造

講評

シラスとは、南九州に広く分布する白色で粗鬆な火山噴出物の総称であり、鹿児島県本土の約50%に分布して平均厚さ約50mのシラス台地を形成しており、その埋蔵量は東京ドーム6万杯分に相当する750億m3ほどもある。シラス台地は、固結性が弱く透水性が高いため農業生産性が低く、梅雨時には浸食と崩壊を受けて大きな土砂災害を引き起こすことから、厄介者扱いされてきたが、近年、その建設材料としての有効利用に向けた研究開発が進められ、道路舗装用の路盤材・平板ブロック、建築壁用の左官材、バルーン化した建築内装材などへの利用が進められつつあった。
設計者は、日本の将来のあるべき姿である資源循環型社会の形成に資することを目的として、無尽蔵とも言える地域資源であり、建築材料として用いられた後も破砕するだけで簡単にリサイクルできるといった長所を有するシラスを、建築物外皮に全面的に利用することを計画し、構造材料および内装材料として用いることのできるシラスブロックの開発に精力的に取り組んだ。しかし、建築物、特に住宅は、人が生活を営む場であり、家族の団欒や安らぎを提供する空間であるため、資源循環型社会への貢献も重要ではあるが、建築空間とそこに用いられる建築材料は、安全・安心で快適な空間を提供できるものでなければならない。設計者は、シラスが体積で50%以上の微細空隙を含む多孔質材料であることに着目し、その調湿効果を快適な室内空間の創出に役立てるとともに、屋上緑化のための基盤として有効に活用している。また、建築外皮を構成する外周の壁は、シラスブロックを中空層のある二重壁(外壁を構造用ブロック、内壁を調湿用ブロック)として積み上げ、調湿効果だけでなく断熱効果をも向上させることに成功している。加えて、自然な通風・換気を促すように開口を配置するとともに、太陽熱集熱器を利用して給湯と床暖房を行っている。その結果、夏は扇風機だけで、冬は床暖房だけで快適に暮らせるようになったとのことで、空調エネルギーの半減化を達成している。
以上のように、「SHIRASU」は、居住者の快適性に最大の配慮を払いながら、資源循環型社会および低炭素型社会の構築にも資する住宅のあり方を示した作品であると言える。

 

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