IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

国土交通大臣賞第3回サステナブル建築賞(商業・サービスビル部門)

「沖縄県立南部医療センター・こども医療センター」

建築主沖縄県
設計者(株)日建設計 (株)国建 (有)創建設計事務所
施工者(株)國場組 金秀建設(株) (株)大米建設 (株)大城組 國和設備工業(株) (合)美里工業 沖縄パナソニック特機(株) (株)沖縄工業 大成設備工業(株)
建設地建設地
構造SRC造、一部RC造
階数地上6階建
延床面積42,733m2

講評

 那覇市内に建つ大規模な医療施設である。沖縄の気候風土に対応した建築として、庁舎などについてはすでに多くの秀作が存在するが、それらはいずれも開放型の設計思想によるものであった。今回は施設の性格上必然的に密閉型になるのであるが、このことと沖縄の風土性との組み合わせの中から独自性の高い大変優れた作品が生み出されている。
病棟の配置が3つの直角三角形を寄せ集めた「みつうろこ」文様のような形になっているが、これは病室の方位性への配慮と看護単位の組み立てとから導き出されたということである。そして外周全面にルーバーとしては異例に大きくて頑丈な縦ルーバーが設けられている。これは沖縄の強烈な日射を遮ると同時に台風時の「風を砕く」役割があるという。フィン幅1mはあろうかというコンクリート製だから瀟洒というわけには行かないが決して無骨な印象ではない。
4床病室では、室温は28℃設定で、室中央にアンビエントのセントラル系統外気供給吹き出し口があり、各ベッドの近くにはFCUが設けられていて患者毎のパーソナルな制御を可能にしている。FCUは天井際に設置され、スリット型横吹きになっていて天井面の冷却とコアンダ効果によるドラフト防止を兼ねている。また室奥のベッドからでも外景が眺められるようにした病室平面形の工夫も面白い。
沖縄の夏季は湿度が非常に高い(冷水コイルだと東京の3倍の凝縮水が出るという)ため、空調システムに独自の工夫がなされている。1つはデシカント空調の採用による省エネルギーであり、もう1つは凝縮水を中水道の水源として活用するというものである。これも水資源に乏しい沖縄にとって有効な対応であろう。
エネルギー消費の実績値については、病院建築で沖縄県ということになると参照するべき確実なベンチマークデータが見当たらないのであるが、過去に建設された類似施設との比較では約16%の省エネルギーになっているとのことであった。

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