IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

理事長賞第4回サステナブル建築賞(事務所建築部門)

「日産自動車(株)グローバル本社」

建築主日産自動車(株)
設計者(株)竹中工務店 (株)谷口建築設計研究所
施工者清水建設(株)
建設地神奈川県横浜市
構造S造、SRC造
階数地上22階地下2階
延床面積92,103m2

講評

 横浜駅から「みなとみらい21」地区に向かう歩行者道路がある。このビルは、「みなとみらい21」のゲートに当たる地点に位置する22階の高層オフィスである。地上階には車の展示場を含む吹き抜けの大きなホールが設けられ、その開放的な大空間をまたぐように、通路でもあり広場でもあるような公共的な歩行者デッキが貫く。
企業の本社機能はその上部にあり、南と北のファサードを全面ガラス張りとし、各階の南北両側に「えんがわ」と名づけた2階吹き抜けの持つのが全体の空間構成の第1の特徴だ。 打ち合わせのスペースである「えんがわ」では、社内のコミュニケーションを活発にし、かつ外界自然の変化をゆるやかに室内に取り込むことによって知的生産性向上を図ることが意図されている。知的生産性を刺激する要因として自然の変化を捉える傾向は、近年ますます多様化しているが、ここでは外界の視覚的な変化のみならず、導入された外気の身体的な刺激にも配慮されている。光は、「すだれ」と名づけられた外側アルミルーバーによって制御されるが、これはライトシェリフとしての機能も果たしながら、視界を妨げないように注意深く取り付けられている。「えんがわ」は南北で1階分ずらして配置されているので、各階オフィス空間は連続的に上下階とつながる。
空間構成の第2の特徴は、フローア中央に位置するライトウエルだ。採光と自然換気を助長する仕組みだが、「えんがわ」と連動して、巨大オフィス空間の単調さを解消する装置としても働く。「えんがわ」、「すだれ」の省エネルギー効果も大きい。
導入された省エネ要素技術には特に目新しさはないが、洗練された省エネ要素技術と空間デザインがバランスよく組み合わされた高層オフィスとして評価できる。知的生産性を定量的に評価する試みも、持続可能なオフィスの発展に寄与するであろう。
歩行者通路が建物内部を貫通する通行システムは、運河など周辺の自然環境条件を活かした外部空間デザインとともに、都市スケールでの持続可能性向上の試みとしても評価できる。

戻るボタン