IBEC 建築省エネ機構(一般財団法人 建築環境・省エネルギー機構)

審査委員会奨励賞第1回SDGs建築賞(大規模建築部門)

「ICI LAB エクスチェンジ棟」

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所在地 茨城県取手市
構 造 RC-S造(柱:RC造、梁:S造)
規 模 延床面積 2,122.20m2 地上3階
建築主 前田建設工業㈱
設計者 前田建設工業㈱一級建築士事務所
施工者 前田建設工業㈱関東支店

講評

 この建物はゼネコンの技術研究所の管理棟である。広大な敷地にガレージと呼ばれる実験施設が展開する中に、ハブのような形で管理中枢機能を担う本施設が配置されている。
 建物はシンプルなキューブ状のヴォリュームにおさめられているが、不要な熱損失を防ぐという観点からは合理的な形状といえよう。平面計画を見ると、日射の制御が課題となる東西面にはコアを設け、中央部に研究者の執務室を配置している。執務室は両サイドをコアに守られ、南北方向から風や光を取り入れられ、無理なく良好な執務環境が確保されている。
  設備環境面でも、井水の熱源利用、免震ピットの熱利用、水面の反射を利用した太陽光発電パネルの設置、デッキスラブを利用した放射空調システムなど、その地のポテンシャルや所与のビルディングエレメントを無理なく、無駄なく環境デザインに活かしているさまがうかがえる。それらの工夫を通じて、各種の認証制度において最高レベルに位置づけられる高い性能を有する建築にまとめあげられている。
  誠実かつ丁寧にフィジックスをデザインし、平面構成や配置、ランドスケープといった種々の計画・デザインとのインテグレートがはかられている。個々の技術、デザイン技法には新規性が乏しいとしても、その総合力は抜きん出たものといえよう。
  さらに特筆すべきはそのシンプルなキューブの屋根及び壁面に太陽光発電パネルを装備し、その前面に水盤を配し、あたかも鉱物質の結晶が水面に浮かぶかのような風景を生み出している点である。ZEBを実現するには太陽光発電パネルの搭載が必須となるが、少なからぬ場所でその景観上の課題がとりあげられている。そのような状況を踏まえ、手堅く環境デザインをまとめるにとどまらず、太陽光発電パネルが織りなす新たな風景を作り出さんとする意欲的な挑戦に感銘を受けた。
  環境を軸に種々の計画と統合し、高次のデザインへと昇華させている建築として、高く評価するものである。

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